競馬新聞に掲載されている厩舎コメントは、出走馬の状態を確認する上で、調教内容と同じように重要です。
しかし、強気のコメントだと感じた場合でも凡走したり、逆に弱気のコメントでも好走したり、意外と見極めが難しいのも厩舎コメントの特徴です。
そもそも競馬は、馬の状態だけで決まるものではないので、厩舎コメントだけで競馬予想をすること自体に無理があるのですが、コメントの内容によって、意味があるものと意味がないものに分類することは可能です。
では、厩舎コメントを競馬予想に役立てるためには、どのようなことに注意すればいいのでしょう。
今回は、厩舎コメントの内容について考えてみます。
なぜ、厩舎コメントでは馬券が当たらないのか？
まず、前提として考えなければばらないのは、出走馬の能力は能力の絶対値プラス調子の良し悪しによって決まるということです。
つまり、どれだけ調子のよい馬がいたとしても、絶対的な能力が劣っていれば、勝つことは困難でしょうし、逆に、たとえあまり体調が思わしくない馬がいたとしても、能力が圧倒的に上回っていれば、あっさりと勝つ可能性もあるということです。
たとえば、私のの体調がどれだけよかったとしても、オリンピックの短距離走に出場する選手に100メートル走で勝つことはまずありえないでしょう。
逆に、少しくらい体調が悪くても、幼稚園児を相手に100メートル走で負けることは考えにくいでしょう。
競馬新聞の紙面上で「最近では最高の仕上がり状態」とか「今週の稽古は、最近で一番反応が良かった」などという厩舎コメントを見ると、思わず馬券を買いたくなります。
しかし、その厩舎コメントは出走馬の状態についてコメントしただけであり、他の出走馬に比べ、能力的に優れているという意味ではありません。
つまり、もともとの能力に大きな差がある場合には、調子の良し悪しは、大きな影響にはならないということです。
自厩舎で管理している馬のみに関するコメントは、他の出走馬との能力比較については、考慮されていません。
しかし、競馬は出走馬同士の相対的な能力比較によって、結果が大きく左右されます。
厩舎コメントを参考にする時には、調子の良し悪しだけに注目したものなのか、他の出走馬との能力比較に注目したものなのか、見極めるようにしましょう。
競馬新聞を埋めるための厩舎コメント
馬券を買う側から見た場合、厩舎コメントの内容で知りたいのは、出走馬が馬券対象になる可能性がどれくらいあるのかについてです。
しかし、厩舎コメントの中には、馬券対象になるのかならないのかについて、まったく関係のない内容も少なくありません。
たとえば、「中間も変わらず順調にきている」という厩舎コメントは、順調に調教メニューをこなしていることは伝わってきますが、厩舎として今回のレースにどれくらい期待しているのかは、まったく分かりません。
「前走は力んで走っていた」という厩舎コメントは、前走の敗因を説明しただけで、今回は力んで走らなくなるのかについては、まったく分かりません。
意味のないコメントやどのようにでも解釈できるコメントに振り回されるくらいなら、厩舎コメントなど無い方がマシです。
意味のないコメントに翻弄されるために、大切にお金を払って、わざわざ競馬新聞を買っているわけではありません。
馬券を買うために必要な厩舎コメントを掲載している競馬新聞と、スペースを埋めるために厩舎コメントを掲載する競馬新聞、あなたはどちらも同じだと思っていませんか？
勝負気配濃厚な厩舎コメントとは
私が、勝負気配を感じるコメントは、レースや相手関係を意識した厩舎コメントです。
たとえば、「前走後、ここを目標に仕上げた」という表現は、あきらかに、このレースに狙いを定めたと考えることができる厩舎コメントですし、「勝ち負けを期待している」とか「好勝負を期待」とかいう表現は、満足のいく調整が出来、相手関係を確認した上で勝利を意識できるからこそ発言できるコメントです。
もちろん、強気の調教師や泣きの多い調教師など、厩舎関係者にもいろいろな性格の方がいるので、コメントのフレーズをどれも同じように解釈することはできませんが、前走の厩舎コメントと比較し、意気込みの違いを感じることができれば、コメントの信用性は、さらに高まるでしょう。
厩舎コメントを競馬予想に役立てる秘訣は、コメントの裏側をイメージすることです。
なぜ、こんなコメントをしたのかを考えてみることです。
馬房数の制限による影響や馬主の意向によっては、使いたくないレースに使わざるを得ない場合もあるでしょう。
厩舎によっては、勝ち負けなど意識せず、調整を目的とし、レースに出走させることがあるかもしれません。
つまり、出走するから勝負にこだわっていると考えるのは、馬券を買う競馬ファンの勝手な思い込みであり、厩舎コメントには、思い込みを冷静に判断するためのヒントが隠されているということです。