クラシックG1のトライアルレースで勝利した馬は、本番のレースでも比較的人気になりがちです。
トライアルレースで強い勝ち方をした馬であれば、圧倒的な人気になることも決して珍しいことではありません。
しかし、トライアルレースで強い勝ち方をした馬は、残念ながら馬券妙味がありません。
今回は、クラシックへのトライアルレースの勝ち馬が馬券妙味のない理由について、考えてみたいと思います。
トライアルレースが状態のピーク
一部の重賞勝ち馬を除き、トライアルレースに出走する馬の多くが優先出走権を手に入れたいと考えています。
なぜならば、どれだけ能力が高くクラシックG1で好走できる可能性を秘めた馬だとしても、優先出走権がなければ獲得賞金の条件などでクラシックG1に出走することができないケースが非常に多いからです。
賞金的に余裕のある重賞勝ち馬は、トライアルレースで優先出走権を手に入れる必要がありません。
このため、トライアルレースを本番に向けてのトライアルレースを割り切ることができます。
つまり、本番に向けての調整としてのレースと考えることができ、たとえトライアルレースで凡走したとしても、厩舎としては織り込み済みの可能性もあるということです。
一方、賞金的にクラシックG1への出走が微妙なトライアルレースの出走馬は、そんな余裕はありません。
クラシックG1の優先出走権を手に入れるためには、クラシックG1ではなくトライアルレースに馬の状態のピークの照準を合わせることも充分考えられます。
つまり、トライアルレースで強い勝ち方をした馬を、本番のクラシックG1で狙うことは、ピークの状態を過ぎた出走馬の馬券を喜んで買っている可能性も考えられるということです。
もしかしたら、クラシックG1ではなくトライアルレースに照準を合わせることは、競馬ファンにとっては違和感を感じるかもしれません。
しかし、もしあなたが馬主の立場だったら、果たしてどうでしょう。
クラシックG1勝ち馬の馬主という壮大な夢と、クラシックG1出走馬の馬主というささやかな夢。
「大きな夢はもちろん叶えたいが、まずはささやかな夢でも・・・」と思うのは、人間の心理ではないでしょうか。
トライアルレースで優先出走権を獲得しクラシックG1に出走することは、馬主にとってステータスです。
馬主が望むことを叶えるのが厩舎の役目と考えることができれば、トライアルレースに馬の状態のピークの照準を合わせる心理も理解できると、私は思います。
勝ち馬が一番強い馬とは限らない
競馬の結果は、出走馬の能力だけでは決まりません。
つまり、競馬に勝ったからといって、強い馬とは必ずしも言い切れないということです。
また、それそれの競走馬には適正というものが存在します。
たとえば、雨が降った直後の重馬場を得意とする馬や、ローカル競馬場に代表される小回りコースを得意とする馬など、コース、距離、馬場状態、展開などレースが行われる際の条件によってレースの結果は大きく左右されるのです。
よく、クラシックG1が行われるコースと同じコースで好走しているから、本番でも好走する可能性が高いと言われることがありますが、私は必ずしもそうとは言い切れないと考えています。
なぜならば、同じ距離、同じコースという条件は、クラシックG1を勝つために求められる数ある適正の、ほんのひと握りに過ぎないからです。
トライアルレースをどれだけ強い勝ち方をしたとしても、展開に恵まれたり時計的に評価出来ないレースの場合、本番のクラシックG1では軽視した方がよいと、私は思います。
過剰人気になりやすい
ニュースなどでも取り上げられることが多いダービーやオークスなどのクラシックG1は、普段馬券を買わない人も馬券を買う可能性が高いレースです。
また、普段馬券を買わない人が馬券を買う場合、馬柱の見方がよく分からないことが多く、競馬新聞の印を頼りに馬券を買ったり、前走の勝ち馬の馬券が買われる可能性が高くなります。
競馬新聞記者の多くは、トライアルレースの勝ち馬を無印にすることはできません。
なぜならば、トライアルレースの勝ち馬を無印にするためには、競馬新聞を買う人が納得できる明確な理由が必要だからです。
また、普段馬券を買わない超競馬初心者は、展開や適正など一般の競馬ファンであれば当然ともいえる競馬予想に関する知識が乏しく、前走買った馬が強く、前走馬券対象にならなかった馬が弱いと考えてしまいがちです。
つまり、通常に重賞レースに比べ普段馬券を買わない人が増えるクラシックG1では、トライアルレースの勝ち馬は、馬券的に買われすぎの状態となり配当妙味に乏しいと考えられるのです。
競馬界やクラシックG1を盛り上げるためにはスターホースは必要不可欠ですが、スターホースが活躍するレースは配当妙味が少ないと、私は思います。